2026年4月3日

【2026年版】社内RAGとは?仕組み・導入方法・精度改善まで徹底解説

RAGとは何かという基礎から、社内RAGの構築方法、回答精度を高めるコツ、導入後のナレッジ運用の仕組みまでを、情シス・DX推進担当者向けにわかりやすく解説します。

石塚芽衣
石塚芽衣
マーケティング
【2026年版】社内RAGとは?仕組み・導入方法・精度改善まで徹底解説

RAGとは?生成AIの「知らない」を解決する仕組み

RAG(検索拡張生成)の基本的な仕組み

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、生成AIが回答を作成する際に、外部のデータベースや文書から関連情報を「検索」し、その情報をもとに回答を「生成」する技術です。日本語では「検索拡張生成」と訳されます。

通常、ChatGPTやGeminiといった生成AIは、学習済みのデータに基づいて回答を生成します。そのため、社内規程やマニュアル、顧客情報といった企業固有のデータには対応できません。

RAGを活用すれば、この「生成AIが知らない情報」を外部から補い、社内データに基づく正確な回答を実現できます。

RAGの仕組みは、主に検索(Retrieval), 拡張(Augmentation), 生成(Generation)の3つで構成されています。

RAGの仕組みの詳細については、以下の記事でより詳しく解説しています。

RAGとファインチューニングの違い

生成AIに社内データを活用させる方法としては、RAGの他に「ファインチューニング」という手法もあります。

ファインチューニングとは、AIモデルそのものを社内データで再学習させるアプローチです。いわば「AIの脳を書き換える」方法であり、高い専門性が求められるうえ、コストが大きく、データを更新するたびに再学習が必要です。

現実的に考えるとその難易度の高さとコストの高さから誰でも気軽に行うことは不可能といえます。

一方、RAGは「AIの脳はそのままに、外部から参考資料を渡す」イメージです。

データの追加・更新が容易で、社内データを外部のAIモデルに学習させる必要がないため、セキュリティ面でも安心できます。

比較項目

RAG

ファインチューニング

仕組み

外部データを検索して回答に活用

AIモデルを社内データで再学習

導入コスト

比較的低い

高い(数百万円〜)

データ更新

ファイル差し替えで即反映

再学習が必要

セキュリティ

データは自社環境に保持

モデルにデータが組み込まれる

専門知識

不要(ノーコードツールあり)

エンジニアリングが必須

企業が生成AIの活用を検討する場合、まずはRAGから始めるのが現実的かつ効果的といえます。

企業がRAGを求める理由

生成AIの急速な普及に伴い、「AIを導入したが、自社の業務に合った回答が得られない」という課題が浮き彫りになっています。

その背景には、いくつかの構造的な問題があります。

  1. 社内データの散在

マニュアルはSharePointに、FAQはExcelに、規程はPDFに──と情報が分散しており、生成AI単体ではこれらを横断的に参照できません。

  1. ハルシネーション(誤情報の生成)のリスク

生成AIは学習データに含まれない情報についても、もっともらしい回答を作ってしまうことがあります。業務利用においては、この不正確さが大きな障壁です。

  1. シャドーAIの問題

社員が個人的に無料のAIツールを使い、社内の機密情報を入力してしまうケースが増えています。セキュアな環境で社内データを活用できるRAGの仕組みは、こうしたリスクへの対策としても有効です。

RAGはこれらの課題をまとめて解決できる技術であり、生成AIを「企業として安全かつ実用的に活用する」ための基盤といえるでしょう。

社内RAGの活用例

ここでは、企業でよく見られる代表的な活用シーンをご紹介します。

社内FAQ・ヘルプデスクの自動化

最も導入事例が多いのが、社内問い合わせ対応の自動化です。

社員が「有給休暇の申請方法は?」「経費精算のフローを教えて」といった質問をチャットボットに入力すると、社内規程やマニュアルを参照しながらAIが即座に回答を返します。

従来は担当者が同じ質問に何度も対応していた業務を自動化でき、情報システム部門や総務部門の負担を大きく軽減できます。

営業資料・提案書の作成支援

営業担当者が顧客への提案を行う際に、過去の提案書や製品資料、導入事例などをRAGで参照できるようにすれば、AIが提案内容のドラフトを自動生成します。

膨大な資料を手作業で探す時間を削減しつつ、過去のナレッジを活かした質の高い提案書を効率的に作成できます。

マニュアル検索・コンプライアンス確認

製造業やサービス業では、業務マニュアルや安全規程、コンプライアンスに関する文書を日常的に参照する場面が多くあります。

RAGを導入すれば、自然言語での検索が可能になります。「この作業で注意すべき安全基準は?」といった質問に対して、該当するマニュアルの内容をもとにAIが的確に回答してくれます。

顧客対応(カスタマーサポート)

社内向けだけでなく、顧客からの問い合わせ対応にもRAGは力を発揮します。

FAQデータベースや製品仕様書をナレッジとして登録しておけば、AIが個々の問い合わせに対して一貫性のある回答を生成します。対応品質の均一化と、オペレーターの負担軽減を同時に実現可能です。

【ツール別】社内RAGの構築方法を比較

RAGの活用イメージが湧いてきたところで、ここからは具体的な構築方法を解説します。

2026年現在、社内RAGを構築する手段は複数存在します。ここでは代表的な3つのアプローチを取り上げ、それぞれの特徴や向いている環境を整理します。自社に最適な方法を選ぶ際の参考にしてください。

Microsoft 365 Copilot で構築する

Microsoft環境を中心に業務を行っている企業にとって、最も身近な選択肢がMicrosoft 365 Copilotです。

Copilot Studioというプラットフォームを利用することで、SharePointやOneDrive上の社内文書をナレッジソースとした「エージェント」をノーコードで作成できます。

ただし、RAGの構築にはMicrosoft 365 Copilotのライセンス(月額4,497円/ユーザー1人当たり)が必要です。

無料のCopilot Chatでは利用できない点にご注意ください。

構築手順の詳細は、以下の記事で画像付きでわかりやすく解説しています。

なお、MicrosoftのAIノート機能「Copilot Notebooks」とGoogleの「NotebookLM」は、RAGに近いソース重視型のAIツールです。

両者の違いについては以下の記事で詳しく比較しています。

ChatGPT × Google ドライブ でRAG構築

Google Workspaceを利用している企業であれば、ChatGPTとGoogleドライブの連携も選択肢になります。

ChatGPTの有料プラン(Plus / Team / Enterprise)では、Googleドライブ内のファイルをChatGPTに読み込ませることが可能です。社内資料を参照しながらAIに質問できるため、RAGに近い体験が得られます。

ただし注意が必要なのは、この連携は厳密な意味でのRAGとは異なるという点です。ファイルを直接読み込む方式のため、大量の文書を横断的に検索したい場合には限界があります。

メリットと注意点の詳細は、以下の記事をご覧ください。

ENSOU AI で構築する(ノーコード・無料から始められる)

「専門知識がなくても、すぐにRAGを構築したい」という方には、ENSOU AIをおすすめします。

ENSOU AIは、株式会社Digeonが提供する法人向け生成AIサービスです。「カスタムチャットボット」機能を使うことで、社内データを連携したRAGをノーコードで構築できます。

直感的なUIで操作でき、わずか3分程度でSharePointやGoogleドライブなどの主要クラウドストレージと連携した高精度なチャットボットを作成可能です。

フリープランが用意されており、クレジットカード登録や申込は不要。

すべての機能を無料でお試しいただけるため、まずは小さく検証を始めたい企業にも最適です。

Googleドライブ連携でのRAG構築手順はこちら:

Kintone環境でのRAG構築手順はこちら:

カスタムチャットボットの使い方の詳細はこちら:

RAG構築ツール比較:Copilot / ChatGPT / ENSOU AI

ここまで紹介した3つのツールの主要な比較ポイントを表にまとめました。自社の環境や要件に合わせて、最適なツールを選んでください。

<!-- 画像挿入:ツール比較表の画像版 -->

比較項目

Microsoft 365 Copilot

ChatGPT(GPTs)

ENSOU AI

月額費用

4,497円/ユーザー〜

3,000円/ユーザー〜(Plusプラン)

フリープランあり(0円〜)

RAG構築方法

Copilot Studioでエージェント作成

GPTs を作成

カスタムチャットボット作成

主なデータ連携先

ファイルアップロード, SharePoint, OneDrive

ファイルアップロード, Google Drive/ SharePoint

ファイルアップロード, Google Drive, SharePoint

構築難易度

やや高(ライセンスの設定が必要)

低(有料プランで即利用可)

低(ノーコード・3分で構築)

セキュリティ

Microsoft環境に準拠

OpenAIのポリシーに準拠

API経由のため学習に利用されない

向いている企業

Microsoft環境が主体の企業

少量ナレッジで手軽に始めたい企業

コストを抑えて本格運用したい企業

ChatGPTとENSOU AIのRAG回答精度の比較検証については、以下の記事で実際の出力結果とともに詳しく紹介しています。

RAGの精度を向上させる3つのアプローチ

RAGを構築したものの、「期待したほど正確な回答が返ってこない」と感じるケースは珍しくありません。

RAGの回答精度は、構築後の改善によって大きく変わります。ここでは、非エンジニアの方でも取り組めるものを含め、精度向上のための3つの具体的なアプローチをご紹介します。

① ナレッジ文書をMarkdown(マークダウン)で構造化する

RAGの精度に最も大きく影響するのは、実は「AIに参照させるナレッジ文書の質」です。

生成AIには、構造化された文書のほうが圧倒的に理解しやすいという特性があります。

見出し・箇条書き・表などで情報が整理された文書と、改行のないベタ打ちの文書とでは、検索精度にも回答精度にも大きな差が出ます。

特に効果が高いのが、ナレッジ文書をMarkdown(マークダウン)形式で整備する方法です。

Markdownとは、「#」や「**」などの簡単な記号でテキストを構造化できる軽量マークアップ言語です。ChatGPT、Claude、Geminiなどの主要な生成AIはMarkdown形式のデータを大量に学習しており、見出しや箇条書きの構造を意味のある情報として正確に認識します。

つまり、Markdownでナレッジを整備することは、AIが「何がどこに書いてあるか」を正しく把握するための最も効果的な前処理です。

Markdownの書き方やプロンプトでの活用法については、以下の記事で詳しく解説しています。

② 引用(Citation)機能で回答の根拠を明示する(エンジニア向け)

RAGの信頼性を高めるもう一つの重要なアプローチが、回答における「引用」の精度です。

生成AIを業務で活用する際、「その回答がどの文書に基づいているのか」を確認できなければ、契約書や法律関連文書、製品仕様書といった正確性が求められる場面では実用に耐えません。

この課題に対して注目されているのが、Anthropic社が提供するCitation APIです。

Citation APIは、AIの回答がどのソース文書のどの箇所に基づいているかを、ピンポイントで提示する機能を提供します。大まかな「参考文献リスト」ではなく、回答の各文に対応する根拠箇所を正確に示せるのが特徴です。

ENSOU AIでもこのCitation APIを活用し、回答の信頼性を担保する仕組みを実装しています。

Citation APIの技術的な詳細や、ChatGPT・Geminiの引用精度との比較については、以下の記事をご覧ください。

③ 非エンジニアでもすぐに実践できる精度改善のコツ

上記2つに加え、日々の運用の中で取り組める改善策も押さえておきましょう。

システムプロンプトを具体的に設計する

RAGの回答精度は、システムプロンプト(AIへの事前指示)の設計にも大きく左右されます。「あなたは情報システム部のヘルプデスク担当です」のように役割を明示し、出力形式や回答できない場合の振る舞いまで具体的に指定することで、回答の一貫性と正確性が向上します。

質問を具体的にするよう利用者を案内する

「交通費の精算方法を教えて」よりも「神戸から東京への出張で新幹線を使った場合の交通費精算方法と領収書の提出先を教えて」のほうが、AIは的確な検索と回答を返せます。利用者向けのガイドラインやテンプレートをあらかじめ用意しておくのも効果的です。

業務領域ごとにRAGを分割する

すべての社内データを一つのRAGに登録するよりも、部署やテーマごとに分割して構築するほうが検索精度は高まります。「人事・総務向け」「営業向け」「技術部門向け」といった形で分けることで、関連性の低い情報にヒットする問題を防げます。

これらの精度改善テクニックの詳細は、以下の記事でも解説しています。

RAGとは?その仕組みとRAGの精度を向上させる方法

構築して終わりにしない|RAGのナレッジを育てる運用の仕組み

RAGを導入した多くの企業が直面する課題があります。

それは、「構築時に登録したナレッジだけでは、すべての質問に答えられない」という現実です。

どれだけ高性能なAIでも、参照できるナレッジが不足していれば「該当する情報が見つかりませんでした」という回答になってしまいます。大切なのは、RAGを構築した後に、いかにナレッジを継続的に育てていくかという視点です。

ここでは、ENSOU AIで実現できる2つの運用アプローチを紹介します。

「回答できなかった質問」をナレッジに変える

RAGで答えられなかった質問は、裏を返せば「企業が次に整備すべき重要なナレッジ」です。

ENSOU AIとMicrosoft 365(SharePoint / Forms / Power Automate / Excel)を組み合わせれば、未解決の質問を半自動的にナレッジへ蓄積していく仕組みを構築できます。

全体の流れはシンプルです。RAGで回答できなかった場合にMicrosoft Formsへの入力を案内し、その内容をPower AutomateでSharePoint上のExcelに自動記録します。担当者がExcelに回答を記入すれば、そのファイルがENSOU AIのナレッジとして自動反映され、次回から同じ質問にAIが対応できるようになります。

ポイントは、「未解決のまま放置しない」こと、そして「ナレッジ追加を習慣にする」ことです。

この仕組みにより、AIは使われるほど賢くなっていきます。

具体的な手順は、以下の記事で詳しく解説しています。

AIエージェントでナレッジを自動生成する

さらに一歩進んだアプローチとして、AIエージェントによるナレッジの自動生成があります。

ENSOU AIとGemini API、Googleフォーム、Googleスプレッドシート、Apps Scriptを連携させることで、問い合わせ対応とナレッジの自動生成を一体化したエージェントを構築できます。

カスタムチャットボットで対応できなかった問い合わせに対して、担当者がスプレッドシートに回答を一度記入するだけで、Gemini APIがその内容を自動的にナレッジとして整形・蓄積します。

同じ問い合わせが二度と発生しない仕組みが実現し、日々ナレッジが自動的に充実していくのが大きなメリットです。

Google Workspace環境をご利用の方は、以下の記事でコード付きの構築手順を紹介しています。

まとめ

社内にRAGを導入するうえでまず大切なのは、RAGとは何なのかを正しく理解し、何ができて何が苦手なのかを把握することです。

RAGは万能な技術ではありません。

参照するナレッジの質に回答精度が左右される、大量データの横断検索には設計の工夫が必要になるなど、特性を理解したうえで導入しなければ、期待した効果は得られないでしょう。

逆に言えば、RAGの仕組みと限界を正確に理解していれば、ツール選定・ナレッジ整備・プロンプト設計・運用改善といった各ステップで的確な判断ができるようになります。

まずは小さな範囲で試し、実際の業務で効果を確認しながら徐々に対象を広げていく──このスモールスタートの姿勢が、社内RAG導入を成功に導くのではないのでしょうか。

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