社内用のChatGPTは内製すべき?それともSaaS?メリット・デメリットと選定ポイントを解説


生成AIの進化が加速する中、多くの企業が「業務効率化」「社内問い合わせ対応」や「カスタマーサポート」の効率化を目的にチャットボットの導入を検討しています。
特に注目されているのが、ChatGPTなどの大規模言語モデルを活用した生成AIチャットボットです。
しかし、いざ導入を進めようとすると、必ず突き当たるのがこの問いです。
「内製で構築するべきか? それともSaaS製品を活用するべきか?」
この選択は、情シス部門にとっては技術的・運用的な負荷の問題であり、経営層にとってはコストと事業インパクトの見極めに直結する重要な意思決定です。判断を誤れば、期待していた効果が得られないだけでなく、人的リソースの浪費や、将来的な柔軟性の欠如といったリスクにもつながりかねません。
本記事では、経営視点と情シス視点の両面から、「生成AIチャットボットを内製すべきか、SaaSを活用すべきか」というテーマについて解説します。
ChatGPTのAPIを用いてRAGを内製する方法は こちらの記事 でご紹介しています👇

SaaS型の生成AIのメリットと注意点
メリット
SaaS型の生成AIサービスの特徴は、初期費用が0円もしくはかなり低く、すぐに導入を始められる点です。
サービスの種類にもよりますが、例えば ChatGPT Team であれば、登録さえすれば10分もあれば使い始めることができます。
また継続的に利用料が発生するという点はありますが、一方で社内の運用コストを抑えて、また継続的な製品のアップデートの恩恵を受けることができます。
注意点
注意点としては、機能を自社の思う通りに拡張していくことが簡単ではないケースがあります。
多くのSaaS型の製品はベンダー企業のサーバーで動かして、様々な顧客にマルチテナントで利用してもらう方針になるため、その場合はカスタマイズはできなことがほとんどです。
一方でエンタープライズ向けなど最上位のプランであれば、自社のサーバーで動かすなどのオプションにより、カスタマイズができるサービスを提供しているベンダーもあります。
内製する場合のメリットと注意点
メリット
一番のメリットは自社に合わせたカスタマイズができることです。
自社の標準に合わせるように、SSO、UI/UX、ログやデータ管理などの仕組みを最適化できます。
また特定のユースケースに特化して精度向上を目指すなど、SaaS型のサービスでは痒いところに手が届かない部分まで対応できます。
注意点
一番の注意点としては、自社で開発・運用を行うためSaaS型の製品よりもコストがかかる点があります。合わせて、開発と運用のための人的リソースやRAGの構築に必要なスキルなども求められます。
またSaaS型の生成AIサービスであれば、セキュリティを売りにしている製品が多くありますが、セキュリティや継続的な改善のための体制とコストも発生します。

内製 or SaaS?判断のための4つの視点
1. クラウド環境を使えるか
企業の文化や性質によって、求められるセキュリティ要件が異なり、特に厳しい場合はクラウド型のサービスを導入することが難しいといったこともあります。
クラウド型のサービスがセキュリティ的に、オンプレミス環境などと比較して劣っているということはないのですが、社内規定がそう定められている場合は、自前で構築する、もしくはベンダーに依頼して自社環境で動かしてもらうしかありません。
2. 開発体制・技術リソースの有無
自社のエンジニアがおり、生成AIのシステムを作れる技術力があり、また開発ができるだけのキャパがあるか、という観点も選定の観点になります。
社内に開発人材が不足している場合や、生成AIへのキャッチアップが十分でない場合は、素早く利用を開始でき、運用・保守まで任せられるSaaS型が理にかなっています。技術習得に時間を割かずとも、すぐに運用を始めることができるのは大きな利点です。
一方で、AI技術に明るいエンジニアが社内にいて、ある程度の開発リソースが確保できるのであれば、内製による柔軟な機能追加が期待できます。また、そういったリソースがない場合でも、外注によってベンダーに開発を委託することで、準内製的なアプローチも可能となります。
3. 導入スピード
すぐに効果を試したいのか、それとも社内環境などで動くという規定を重視するのか。導入スピードに対する考え方も、判断基準となります。
SaaS型は、申し込みからすぐにPoC(概念実証)や社内トライアルを開始できる点が魅力です。IT部門や現場部門がスピード感を重視する場合には、導入の障壁が低く、短期間で効果を体感できます。
一方で、内製型は、要件整理・設計・構築といった工程を経る必要があるため、導入までに一定の時間(3〜6ヶ月程度)がかかります。短期的また中長期に渡り開発や運用のコストがかかりますが、従業員数が1,000名を超えるなどの規模であれば、内製に踏み込むための費用的なメリットが発生する可能性もあります。
4. 将来的な拡張性とシステム連携
最後に、将来的な拡張や全社的な最適化を視野に入れた場合の考慮点です。
SaaS型は、SaaSベンダーが開発を進めてシステムを更新していくため、継続的に機能が改善されていくことが期待できます。一方で社内のファイルサーバーなどのデータと連携するといったような、自社の特有のユースケースに適した機能の提供は期待できないという観点があります。
内製型であれば、機能拡張のためには都度開発リソースが必要となり、その分の人件費や外注費が発生します。しかし、社内のファイルサーバーや独自の連携を行いたい場合は、内製をすることによってSaaS型では難しいような痒い所に手が届くシステムにすることも可能です。
SaaS vs 内製 どんな会社がどちらを選択するべきか
社内のITリテラシーが低い場合
このような企業では、SaaS型の生成AIチャットボットを活用するのが推奨です。
初期費用を抑えて、アカウント登録だけですぐに利用を始められるサービスも多いため、自社にマッチするかの検証・実際の本番運用を始める、そのいずれにとっても適していると考えられます。
また、運用負荷も軽いため、情報システム部の人員が限られている企業でも無理なく導入できます。
金融・医療・官公庁など、セキュリティの制約が厳しい業界
金融・医療・官公庁などでは、第三者のサーバーを経由しないこと、自社のネットワーク内に閉じた環境で利用できること、などの厳しいセキュリティ要件を求められることがあります。
このような厳格なセキュリティポリシーが求められる業界では、
- 自社環境内で完結する内製型
- プライベートSaaS型の導入
のどちらかの選択肢が有力です。
自社環境内で完結する内製型はセキュリティ要件的に合致したものを作りやすいという性質がある一方で、その要件を満たすシステムを作るには一定の技術力と開発コストが発生します。
またSaaS型のサービスの中には、エンタープライズ向けのプランなどであれば、自社のサーバー環境で構築してくれる会社もあります。社内での開発が難しい場合は、このようなプランを利用するという手も考えられます。
社内にAIに詳しい開発チームがあり、また利用人数も多い場合
このケースは生成AIサービスを内製するのもひとつの手です。
内製における一番のハードルは技術力・開発リソースの2つですが、それを満たせてかつ利用するユーザー数が多いような場合は、内製が適していることがあります。
SaaS型のサービスは利用するユーザー数に応じた料金体系になっていることが多く、例えばChatGPT Teamを利用する場合、ユーザー当たり月額$25(約3,500円)の費用が発生します。社内の利用者数が1,000人だとすると、それだけで毎月3,500,000円の費用が発生することになります。
年間で考えれば4000万円以上の費用になるため、内製をする方がコストメリットが出てきます。
生成AIチャットボットの導入コストはどれくらい?
生成AIチャットボットの導入コストは、「SaaS型」を選ぶか「内製型」を選ぶかによって大きく異なります。
SaaS型の導入コスト
SaaS型のチャットボットは、初期費用が無料または非常に低価格であることが一般的です。例えば、ChatGPT Teamプランでは、1ユーザーあたり月額約3,500円($25)程度で利用できます。また、弊社が提供するENSOUチャットボットであれば、ユーザーあたり月額900円と、さらに安価に生成AIをご利用いただけます。
従業員数が100名で全員が利用する場合、以下の金額で利用できます。
- ChatGPT Team:月額 ¥350,000
- ENSOUチャットボット:月額 ¥90,000
内製型の導入コスト
内製でチャットボットを構築する場合は、以下のような費用要素が発生します。
- エンジニアの開発人件費(2〜3名 × 数ヶ月):数百万円〜1,000万円
- インフラ運用コスト(クラウド利用料など):月数万円〜
- セキュリティ・保守対応コスト:月10万〜数十万円
- 外部パートナーへの開発委託(※外注時):数百万円〜
このことから、
- 初期費用で500〜1,000万円程度
- 運用費用で毎月10〜数十万円程度
のコストがかかることが想定されます。
内製するために必要なスキル
生成AIチャットボットを内製する場合、単にエンジニアがいれば構築できるというものではありません。以下のような専門的な知識やスキルを持つ人材が必要になります。
生成AIの基礎理解
- LLM(大規模言語モデル)
- 自然言語処理
- プロンプト設計などの理解
API連携の知識
- OpenAI APIやAzure OpenAIなどの外部APIの扱い
RAG(Retrieval-Augmented Generation)
- ベクトル検索
- ドキュメント埋め込み
- LangChainなどフレームワークに関する知識
システム開発
- 社内向けに適したユーザーインターフェースの設計
- セキュリティ、認証認可、データ管理など非機能要件
- インフラ運用に関する知識と経験
上記スキルが社内に不足している場合は、外部パートナーと連携して社内向けのシステムを構築するアプローチも考えられます。
ENSOUチャットボットで生成AI活用を始めませんか?
弊社では法人向けにChatGPTを使えるSaaS、ENSOUチャットボットを提供しています。
SaaS型で生成AIやChatGPTの活用を始めたい方に最適なサービスです。また、エンタープライズ向けのプランでは、お客様の環境で動かすという内製・自社環境でのサービス提供もしております。
また導入しても社内で使われないという状況を避けるために、活用のコンサルティングサービスもご利用いただけます。実際のどの業務で使えるのか、どんなプロンプトを入力すれば良いのか、といったお悩みがある場合に最適です。
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